『ワークマン』『シャトレーゼ』の利益率が高い理由。

強い専門店の共通点 ワークマンとシャトレーゼの強い理由

ワークマン 23.6%

ニトリ 17.5%

シャトレーゼ 15.7%

ABCマート 15.5%

良品計画 15.1%

日経MJ2021年度専門店調査よりの経常利益率です。

これらの会社に共通している項目があります。

それは、お客様に『安い』というイメージを植え付けられている点です。

この中でもワークマンシャトレーゼの強さが目立ちます。

強い理由は何でしょう?探ってみます。

ワークマン

ワークマンは、作業着という分野よりもアウトドアやゴルフなども展開しています。

また、ワークマン女子やワークマンシューズという形での出店も成功しています。

作業着として他の企業と比べ、価格が安いかどうかはわかりませんが、アウトドアやゴルフ、また、通常のカジュアル衣料など他のメーカーと比べると断然安い価格になっています。

このことが、ワークマンは安いといわれている理由の一つです。まあ、実際安いのですが。

だけど、利益はきっちりと残しています。

その理由は、何でしょうか?

ワークマンが高い利益率をだせる理由

  1. 直接販売モデル:ワークマンは、一部メーカー企画もありますが、ほとんどが製造から販売までのプロセスを自社で一括して行うことで、中間マージンを排除し、直接販売モデルを採用しています。そのため、製品価格を低く抑えつつ、高い利益率を確保することができます。
  2. FC戦略:ワークマンの店舗はほとんどがフランチャイズです。このことによってワークマン自体の人件費は抑えられ、商品の納品時の利益が、ほぼそのまま残る形になります。ただ、コンビニなどのフランチャイズと違い、フランチャイジーに対して厳しすぎる運営ではない戦略をとっています。
  3. 無駄を省く経営:ワークマンは、製品の生産や在庫管理、店舗運営など、あらゆる面で無駄を省くことに注力しています。例えば、店舗内でのインテリアや装飾を極力排除することで、運営コストを最小限に抑えています。生産については生産工場の閑散期を利用しての生産により生産コストを落としています。
  4. 専門店としてのラインナップ:ワークマンは、もともと、作業服や安全靴などの専門的な商品の展開をしています。このような商品展開により、ワークマンは、市場での競合を避けることができ、高い利益率を実現することができます。
  5. 値下げを出さない仕組み:作業服や安全靴などは、デザインなどの理由による値下げをしなくてもよい商品群になります。このことも高い利益率の要因です。一度売り出したプライベートブランド製品は原則5年間継続して販売しています。5年で売り切れなかった商品のみが値引き販売で消化されます。実に定価販売率は98%以上とのことです。
  6. 経営陣の経験と能力:ワークマンの経営陣は、長年にわたって小売業界での経験を積んでおり、効率的で収益性の高いビジネスモデルを構築することができています。その商品に特化した専門店はその商品群で利益を出す方法をよく知って行動できます。GMSなどの苦戦は、その商品のプロの育成ができずに、トップが在庫日数や利益率など平均的な見方しかできずに本当に利益が出る方法を知らないことにあります。
  7. お客様に伝える力:ワークマンの販促は、アンバサダーマーケティングが有名です。アンバサダーに商品のサンプルや情報を提供し、アンバサダーの自主性に委ねて商品に関しての情報発信をしてもらう形です。
    しかもワークマンは金銭的報酬を原則支払わないので、忖度した記事にならないため信憑性が高い記事になります。

 

ワークマンの今後の課題

  1.  競合の増加:ワークマンは、競合他社と比べて高い利益率を維持していますが、近年、競合他社も低価格商品を展開するなど、ワークマンの独自性が薄れつつあります。そのため、今後は競合との差別化がより重要になります。
  2.  オムニチャネル化の必要性:ワークマンは、従来から店舗中心のビジネスモデルを採用してきましたが、今後はオンラインストアやモバイルアプリなどを活用し、オムニチャネル化を進める必要があります。これは、あらゆる小売業に共通している項目です。
  3. 国内外での拡大:ワークマンは、国内外で急速に店舗展開を進めていますが、今後は海外市場での認知度を高め、ブランドイメージの向上に注力する必要があります。
  4. 社会的責任の重視:ワークマンは、社会的責任を重視する姿勢を打ち出していますが、今後は環境負荷の低減や従業員の福利厚生の向上など、より具体的な取り組みを進める必要があります。企業の規模が大きくなり認知度が高くなるにしたがってこの社会責任の重視が必要になってきます。
  5. 利益の確保:フランチャイズによる販売のため、ワークマン自身は利益率が悪くならないシステムになっていますが、フランチャイジーは今までの値下げの少ない作業着と比べ、デザイン性がある商品では、当たり外れが出てきます。その時の失敗作の処分の仕方によっては、利益を圧迫する可能性がでてきます。

シャトレーゼ

シャトレーゼはどうでしょう。

出店数は実に83店舗の新店を出店しています。売り上げの伸び率は 28.2%。

出店のほとんどは、FCのため、出店のコストはシャトレーゼにはかからない形を取っています。

これが、経常15.7%の源泉です。これもしっかりした商品があってのものです。

 

FCのロイアリティは、0%です。また、売上の送金義務もないようです。商品の供給で利益を確保する形を取っています。

加盟預託金は500万、これは契約終了時に戻ってきます。建築設備費が4000万から5500万。研修費、開業手数料、開業準備で300万。

出店にかかる費用は、高めになっています。初期投資の回収に時間がかかるなどの問題もあるようですが、今の人気からすると、この問題も解消できてきているようです。

各店舗の24年の足元の日販は70万円近くになり、セブンイレブンの水準になってきています。投資回収も効率アップで早くなってきていると思われます。

製造のための工場も国内3カ所(岡山、山形、鹿児島県)で24年中に新工場が稼働しますし、フランチャイズの希望も続いているようです。

まだまだ、シャトレーゼの進撃は止まらないようです。

契約期間 10年なのでこの人気が続くという前提が必要になりますが・・・。

24年に90歳になるカリスマ創業者の齊藤会長がいまはお元気で、創業者ならではの判断をされていますが、その後というのも気になるところです。

シャトレーゼが高い利益を出せる理由

  1. 製造・販売の一貫体制:シャトレーゼは、自社工場での製造から販売までを一貫して行うことで、中間マージンを排除し、利益率を高めています。店舗の出店と同時に製造工場や物流の整備にも力を入れています。
  2. 低価格での品質の維持:シャトレーゼは、低価格帯の商品を展開しながらも、品質を維持することに注力しています。そのため、顧客からの信頼度が高く、リピート率が高いという特徴があります。
  3. 地方創生への貢献:シャトレーゼは、地方創生にも力を入れており、地方の農産物や食品加工業者と協力して、新たな商品を開発したり、地域のブランド化に貢献したりしています。これにより、地域の認知度が高まり、地元の消費者から支持されることで、利益を上げることができます。
  4. 多角的な商品展開:シャトレーゼは、ケーキや焼き菓子、アイスクリームなどの菓子類だけでなく、惣菜やパン、ワインなども展開しています。そのため、幅広い層の顧客に商品を提供することができ、収益を拡大することができます。
  5. 経営陣の経験と能力:社長職は譲ったのですが、創業者の齊藤 寛(さいとう ひろし)氏がまだ会長として目を光らせています。シャトレーゼは未上場なので、経営の方向性を決めることができます。商品についても創業者が圧倒的な知識を持っているので下手なものは出せません。アイリスオーヤマなども同様です。

ワークマンとシャトレーゼの強さの共通点

ワークマンとシャトレーゼの強さの共通点は以下のようなものがあります。

  1. 低価格戦略の採用:両社ともに、低価格での商品提供を重視しています。ワークマンは、商品の品質を維持しつつ、コスト削減に取り組むことで、低価格を実現しています。一方、シャトレーゼは、自社の製造・販売によるコスト削減を図り、低価格での商品展開を実現しています。
  2. 独自の商品開発・生産体制の構築:両社ともに、独自の商品開発・生産体制を構築しています。ワークマンは、商品の企画から生産・販売までを一貫して行うことで、高品質かつ低価格な商品を提供しています。一方、シャトレーゼは、自社工場での生産や、製造プロセスの改善によって、高品質な商品を生産しています。
  3. FCでの拡大:ワークマンもシャトレーゼもほとんどがフランチャイズ店舗になっています。そのことで商品の供給がそのまま利益に反映します。ただ、フランチャイジーも利益が出る商品力・店舗運営ノウハウなどが構築されていることが一番の理由です。
  4. 創業オーナーのカリスマ性:ワークマンは、ベイシアグループの創業者土屋嘉雄氏が作った会社です。ベイシアグループはそれぞれの社長が育っています。存命の創業者の下でやりたいこともできるが下手なことはできないという社風のように感じます。シャトレーゼも同様、商品や経営戦略など創業者の齊藤 寛氏の下での意思決定のようです。

 

実はコメダ珈琲も同じ

コメダ珈琲も1000店舗近くの店舗のうち、94%がフランチャイズです。

シャトレーゼと同様、収益のほとんどがFCへの商品卸売りにて確保できています。店舗運営コストもフランチャイジーが負担しているためにコメダ珈琲自体は経費がかからない仕組みができています。

シャトレーゼやワークマンと同じです。ただ、商品やノウハウがしっかりしていないと、今問題になってきている高級食パンのように閉店が続き、仕組みが続かないようになります。