新たな小売業の収益源『リテールメディア』店舗は広告媒体

リテールメディアとは?

小売企業が持っている小売店舗やECサイトなど、従来「モノ」を売る場所をメディアとして掲載する「広告枠」として販売する仕組みのことです。

小売企業は実店舗を持っているので、オンラインでもオフラインでも、メディアネットワークを構築することができます。特に小売り企業は消費者と直接的な接点をもっているので、実店舗での販売データ・POSデータやECサイト、アプリの販売データを活用することによって、より精緻なターゲティングができます。

多くの顧客データを持つ米国のAmazonやウォルマートや日本のイオンやセブン&アイなど大手の小売業界でもリテールメディアに注目してきています。

電通グループ傘下のCARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)の22年9月におこなった試算によると、リテールメディア広告の26年の市場規模は22年の約6倍の805億円に成長する見通しです。

リテールメディアが注目されてきた背景

サードパーティCookie規制

リテールメディアが注目されてきた背景の一つとして、「サードパーティ(=他社)Cookie規制」があります。

「サードパーティCookie」とは、消費者のWebの閲覧履歴をもとに作成されたリストのことです。このリストをもとにアクセス先のサイトとは直接関係がなくても関連性があれば、広告を打つことができていました。このサードパーティCookieが廃止されることにより、直接サイトを訪れたもの(ファーストパーティ)にしか広告を打つことができなくなります。

Googleは、2020年1月に2年以内にサードパーティクッキーを廃止すると発表しました。実際は、何度かの延長を経て、今は2024年に延長されています。

延長の理由としてGoogle社が考案したプライバシー保護技術「プライバシーサンドボックスAPI」のテストに時間がかかるためとしています。

いずれにしても廃止の方向は間違いのないことです。

この規制によって実店舗を持つ小売業の「ファーストパーティ」のデータが注目され、重要視されるようになってきました。

 

ITテクノロジーの発展

AI・IoTなどITテクノロジーの発展もリテールメディアが注目されてきたことへの後押しになっています。

実店舗から収集した多種多様で膨大なデータを分析するために、AI・機械学習技術の発展は、リテールメディアを実現する上で重要な項目の一つといえます。

自社のECサイトやアプリの導入は、多額の開発・運用コストを必要としていたのですが、今はSaasなどのツールを使用することで、導入のハードルは下がっています。

プログラミングの必要がない、ノーコード・ローコードと呼ばれる、直感的にクラウド上などでアプリを作成や編集ができるツールもでてきていて、小売企業が自社でECサイト・アプリなどのメディアを持つのも容易になってきています。

小売業でリテールメディアを実施するメリット

新たな広告の手段

サードパーティの規制による新たな販促手段として、広告を打つ方としては新たな場所が必要となってきます。

その提供の場所として多くの顧客が直接訪れる実店舗やECサイトが利用されるようになります。

メーカーとしても購入する予定のある人へ、直接目に触れるということでのメリットがあります。

新たな収入の手段

自社が運用するECサイトに広告枠を造ることで広告の場所として販売できるため、物販だけでなく、新たな収入源を確保できるようになります。

サイバーエージェントの取り組み

サイバーエージェントは店舗を広告媒体と捉える「店舗のメディア化」支援に力を入れている。小売店にデジタルサイネージの設置を進めるほか、商品が自ら動いて販促活動する「自己推薦ロボ」の設置実験を大阪市で始めた。サイトの閲覧履歴などを記録する「クッキー」をインターネット広告に活用するハードルが上がるなか、販促の新たなプラットフォームとして小売店などの需要を開拓する。      日本産業新聞 2023.6.27

サイバーエージェント社は店舗全体のメディア化支援事業に力を入れてきています。

デジタルサイネージを設置してPOSデータと連携し、より精度のある広告の配信ができる仕組みの構築を計画しています。

今までネット上で行われていた顧客のニーズに合わせた広告配信のリアル店舗版と言えます。

薬コーナーの前を通るときに、私にはダイエットのCMや育毛剤のCMばかり出るのはちょっと困りますが・・・

ドンキとファミマの取り組み

ドン・キホーテのパシフィック・インターナショナルホールディングスとファミリーマートは、2023年5月より自社の顧客データの共有利用を実施している。

顧客データを匿名化して消費行動を分析したうえでクーポンを配信して販促に利用している。

マツキヨの取り組み

自社のECサイトやアプリで広告を消費者の購買データをもとに配信し、取引先企業から広告料を受け取る「リテールメディア」を強化している。