N1分析とは?問題解決力を高めるシンプルかつ強力なフレームワーク
「問題解決を進めたいけれど、何から手をつけていいかわからない」
そんな悩みをお持ちではありませんか?
ビジネスの現場では、複雑に絡み合った問題に直面することが多く、シンプルに本質を捉える力が求められます。
そこで注目されているのが N1分析 です。
この記事では、N1分析の概要や使い方、具体的な進め方をわかりやすく解説します。
N1分析とは?
N1分析とは、「問題を最も典型的に表している1つの事例(N=1)」にフォーカスし、その深掘りから問題の本質や解決策を導き出す分析手法のことです。
多くのデータを一度に分析するのではなく、代表的な1ケースを徹底的に分析することで、全体像を素早く把握したり、構造的な問題を抽出したりできます。
なぜ「N=1」が有効なのか
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データが大量にあると混乱しやすい
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代表的な一例からスタートすることで、具体的かつリアルに問題を把握できる
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詳細観察を通じて、他のケースにも応用可能な本質的な課題が見える
このように、N1分析は「本当に向き合うべき問題」をクリアにする強力なツールです。
N1分析の進め方
実際にN1分析を進める際のステップを簡単にご紹介します。
1. 典型ケースの選定
問題が最もよく現れている事例を選びます。
例:
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クレームの多い顧客の一例
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作業ミスが発生した現場の一例
など「特徴的」かつ「問題を代表している」といえるケースを選びます。
2. 事実の詳細把握
そのケースについて
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いつ
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どこで
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だれが
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何を
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どうしたか
といった情報を具体的に深堀りします。
現場での観察やヒアリングが非常に大切です。
3. 背景要因の分析
事実の中から
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何が根本的な原因だったのか
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どうすれば防げたのか
を丁寧に整理します。
ここでは「なぜ」を繰り返す Why-Why分析 を組み合わせるのも効果的です。
4. 解決策の仮説立案
背景要因がつかめたら、それに対する解決策を考えます。
その際も「この1ケースに有効かつ、他のケースにも応用できるか」という視点で検討すると良いでしょう。
N1分析を活用するポイント
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データに溺れない
→ まずは典型事例を徹底的に見る -
現場感覚を大事にする
→ 数字だけでなく、人や現場の状況を観察する -
仮説思考で全体に展開
→ 1ケースの教訓を、全体改善に活かす
まとめ
N1分析は、数多くの問題に対して「どこから着手するか」を明確にしてくれるシンプルで強力な分析手法です。
複雑な課題を抱えたときこそ、典型的な一例に立ち返り、深く観察してみる価値があります。
「問題を俯瞰するのではなく、徹底的に一つに向き合う」
これが、問題解決の第一歩として非常に有効です。
【具体例】N1分析の活用シーン
事例:スーパーのレジでの会計ミス
背景
あるスーパーマーケットで
「レジでの打ち間違いが多い」というクレームが増えている状況でした。
月に10件以上の会計ミスが発生しており、原因がはっきりしていません。
N1分析の進め方
① 典型ケースの選定
10件のクレームのうち、最も影響が大きく、かつ問題を象徴している
「会計金額が1,000円以上間違っていたケース」を選びました。
→お客様に大きな迷惑をかけてしまい、二度と来店しないと言われた深刻な事例です。
② 事実の詳細把握
その一件について
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いつ:平日の夕方18時頃
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どこで:4番レジ
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だれが:新人レジ担当者
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何を:商品のバーコードをスキャンミス
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どうしたか:同じ商品を2回スキャンし、さらに一部をスキャン漏れした
を詳しく確認しました。
さらに周囲の店員にヒアリングした結果
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夕方はお客様の行列が長くプレッシャーがかかりやすい
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新人はまだ慣れておらず、スピードを意識しすぎていた
という事実もわかりました。
③ 背景要因の分析
この事例から
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原因①:レジ担当者の操作習熟度が不足していた
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原因②:ピーク時間に新人を一人で配置していた
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原因③:お客様の行列による心理的プレッシャー
という根本要因が浮かび上がりました。
④ 解決策の仮説立案
上記の背景要因に基づき
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新人にはピーク時間を外して配置する
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夕方ピークは必ずサポートスタッフを横につける
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新人教育で「スピードより正確性」を重視させる
といった改善策を設定しました。
さらに
「レジ操作のチェックリスト」や「簡易マニュアル」を整備し、
同様の問題が他のレジ担当者にも起こらないようにしました。
結果
その後、
ピーク時間にサポートをつける体制を取ったことで
大きな会計ミスは激減し、クレーム件数は月に2件程度にまで改善されました。
まとめ
このようにN1分析は
「まず代表的で深刻な1つのケースに深く入り込む」
↓
「構造的な問題をあぶり出す」
↓
「改善策を立案し、全体に波及させる」
という流れで活用します。
データを網羅的に見るよりも、スピーディに本質を捉えやすいのが大きな強みです。