ABCマートの利益が出る仕組み。強い理由。

2023年の第51回日経MJの専門店調査によるとABCマートの営業利益は専門店全体の第5位の34,765百万円でした。前年の12位からの大幅アップです。

連結売上は前年比19%増の2,900億円ですから営業利益率は12%

業種別の経営指標ランキングでは、総売上経常利益率が18.3%の1位。2位はオリエンタルトラフィックのダブルエーの5.2%ですから、実に3倍です。

この高収益の理由の一つは、高い一人当たり売上です。こちらも業種別の1位です。37,257円。2位はダブルエーの35,064円です。3位のチヨダが20,818円なのでABCマートとダブルエーの2社が非常に高いといえます。

もとは卸がメインだった。ABCマートの歴史

私は、以前、地方の大手量販店で靴のバイヤーと靴部門の責任者を約20年近く経験していたことがあります。

今でこそ靴の小売店として断トツのABCマートですが、私がバイヤーをしていた時は、卸がメインでした。ITC(インターナショナルトレーディングセンター)という会社名で、小売店舗の名前としてABCマートがありました。

西日暮里にあった本社に展示会で何度も行きました。途中で渋谷の店舗の上での展示会に変更になりましたが・・・

私が、バイヤーの頃に「今後、卸はやめていきます。」と急に言われました。実際はそれから数年かかっていたと思います。
その時は、何を言っているのか意味が分かりませんでした。ホーキンスが売れ始め商品の取り合いも起こるほどの時期だったので。

私が担当していた靴売り場は当時の量販店では考えられないのですが、トレンドのスニーカーも多く展開しているヤング中心の店舗もありました。
1店舗は20億、もう一つの店舗は、30坪ないぐらいで10億の販売と地方ではよく売っている店舗でした。

ITCのホーキンスのワークブーツやその頃はやっていたエアーソールシューズもよく売る店でした。
だから、ホーキンスやバンズが入荷しないとは考えられませんですし、その卸をやめることも考えられませんでした。

そのころ、小売りのABCマートの店舗は、渋谷、アメ横、札幌などにありました。

渋谷の店舗に行くと坊主頭の写真が飾られていることがありました。
札幌の店舗との販売競争で負けた札幌店の社員が坊主頭にしている写真とのことです。
今ではパワハラで絶対だめですよね。

でもそれぐらい活気があって元気な店舗という印象を受けました。今でも元気ですが・・・

ABCマートの強さを見てみます。過去のこともあり覚え違いがあればご容赦ください。

まずは、高利益率を支える、商品力、ブランド戦略です。

【商品力】ブランド戦略

ブランド戦略で量販店でよく用いられるのが、自社ブランド、PB(プライベートブランド)です。
これは、理想ではあるのですが、育てるのに時間がかかります。

ABCマートは、認知されている、または由緒あるブランドをさらに認知度を上げていく戦略をとりました。

同様のことをチヨダシューズもやっていますが、セダークレストなどは、残念ながら、買収時よりもブランドの価値を大きく下げてしまった印象があります。

また、ユニクロのようにすべてを自社ブランドという形は、取っていません。
お客様目線での品そろえで、いろいろなブランドがそろっている靴の専門ショップという風に見せています。

衣料品の専門店と違い、靴だけの専門店では、種類のバリエーションが少ないため、一つのブランドだと展開数に限りが出るため、ブランド数で種類が多くあるようにしています。

実際は、バンズやホーキンスというように自社生産で60%から70%という高い構成の商品で稼げる仕組みを作っています。

また、ニューバランスやナイキなどとは、ABCオリジナルという形でほかに出回らない形をつくり、価格競争に巻き込まれないようにもしています。

このように、利益を残すための手段が多く盛り込まれています。

ブランドごとに見ていきましょう。

ヴァンズ・バンズ(VANS)

スケボー用として、若い人に人気のバンズのスニーカー。芸能人の方もよく履いていますね。

バンズはアメリカのスニーカーブランドです。 日本ではABCマートが1994年に国内商標使用契約を取って、生産・運営を行っています。

ムラサキスポーツなどで販売されているバンズは、アメリカ企画になり、ABCマートでの販売のものとは違います。

ABCマートのバンズは、ABCマート以外では販売されていません。デザインも若干違います。

 バンズの靴はコンバースなどと同じバルカナイズ製法で作られています。この製法はスニーカーの原点といえる製法です。

安いスニーカなどもこの製法が多いです。ということでブランドがつかなければ1000円ぐらいで売られている靴です。

ABCマートが自社で生産・運営をしているため、利益率を多く取れるブランドになっています。

知名度の高いブランドを契約して、PBと同様にモノづくりをする。これが、営業利益率の高い理由です。

自社PBと比べて、有名ブランドですから価格設定が通るのが大きいのです。

実は、これに味を占めたABCマートは、実現はしなかったのですがコンバースがアメリカで倒産したときに、アメリカまでコンバースの商標を取りに行っていました。

ロサンゼルスでの靴の展示会に参加していた日本の大手の靴メーカーの社長さんからの情報でした。

ホーキンス

ホーキンスといえば、紳士靴の代名詞的な存在になっていますね。ちょっと年代が上の・・・

ABCマートは1986年からホーキンスの日本における国内総代理店となっていて、1995年にはホーキンスの商標権を取得しています。

翌年には、木村拓哉・大塚寧々をHAWKINS AIR CUSHION の広告に起用して大々的に打ち出していました。

まったくのPBと比べて、調べられてもイギリスの由緒あるブランドということで価格が通ります。うまい戦略です。

当初のターゲットは、若い人でした。

そのころ私は、紳士靴のバイヤーを担当していました。社会問題にもなったナイキのプレミアム商品のブームの終わりの頃です。
学生の通学の足元がボリュームのあるナイキのバスケットシューズから、ワーキングブーツに一時期変わっていった時です。

最初はCATのワークブーツが人気だったのですが、ITCがホーキンスブランドで大々的に仕掛けてきました。
いつしか、CATのワークブーツはホーキンスのマネといわれるようになっていました。

ホーキンスは、イギリスのメーカーで歴史もあるメーカーですがバンズと比べて、もともとの知名度はそれほど高くないメーカーでした。

それを木村拓哉・大塚寧々の広告で一気に有名ブランドに仕上げました。上手な戦略です。

通常のPBのと比べて、ブランドを調べられても歴史あるブランドで価格が通るのですから。

最初は、バンズ同様若い層をターゲットとしていたのですが、途中からウォーキングシューズ、ビジネスシューズで年齢を挙げて値ごろ商品を出していきました。
これも上手な戦略です。若い層をターゲットにすると流行というものがついてきます。これは非常に予想が難しいものがあります。

それに比べ、年齢を上げていくと多少の流行には左右されますが、大きくはぶれません。ましてや、男性用はほとんど変化がないといってもいいです。

ワークマンが高利益を出している、作業服に通じるものがあります。そのワークマンもワークマン女子ということで女性ものの構成を上げてきていますが、売り上げは取れても利益面では苦戦するのでは。と予想されます。

私の勤めていた会社の人も多くがホーキンスの靴を履いていました。ブランドではきやすく価格も手ごろと言って・・・
素材はもっと上で価格もホーキンスよりも安いビジネスシューズを売り場では展開していたのですが、ホーキンスというブランド名に負けていました。

ホーキンスもバンズ同様非常に利益率が高いブランドになっています。

レディースブランド『NUOVO COLLECTION』

もともとメンズは強かったのですが、レディースはあまり強くありません。

ただ、市場規模は圧倒的にレディースシューズのほうが大きいので、ここを取りに行く戦略です。イタリア語で「新しい」を意味する言葉です。ショップも記憶では、博多のキャナルシティに作りました。

私もすぐに見に行きましたが、ちょっと中途半端な感じがしました。

レディースというくくりでは、バンズやホーキンスのようなブランド戦略をとりずらかったのでしょう。

トレンドに敏感なライフスタイルセレクトショップ『Charlotte』というショップもオープンさせていますが、レディースカテゴリーはいまだに中途半端な気がします。

販売力・接客力

ABCマートの強みの一つに、販売力があります。

先にも上げたように一人当たり売上が業種別の1位の37,257円です。2位のダブルエーも高い35,064円なのですが、3位のチヨダが20,818円ですから、ABCマートとオリエンタルトラフィックのダブルエーが非常に高いです。

ABCマートは、社長まですべて、売り場に立って接客をしているそうです。しかも、接客力では、社長が一番という話を聞いたことがあります。あくまでもうわさで、信じる信じないはあなた次第ですが・・・

むかしからだれが販売したかは一目瞭然になっていたようです。

冒頭にこれも書いたように、ABCマートの店舗数が少ないころは店舗対抗の売り上げ競争を実施していて、負けて坊主という写真がレジのところにはられていました。それぐらい接客販売に力を入れていたということですね。

通常のアパレル販売以上に靴の販売は接客が重要になります。それはサイズ区分が小さいのでセルフで探すのは少し面倒だからです。

売り場にすべての在庫を展示というのは難しいこともあります。したがって接客販売がとても重要になるのです。

ABCマートが強い理由のまとめ

1. ABCマートの価格競争力とコストパフォーマンス

「お得にブランド品を手に入れたいけど、やはり安さにはこだわりたい」。そんなふうに感じたことはありませんか?

ABCマートでは、多くの人が抱くこのニーズを的確に捉え、豊富なラインナップをリーズナブルな価格で提供しています。

特に、価格競争力とコストパフォーマンスの高さがABCマートの最大の強みです。

1.1. 圧倒的な価格競争力

ABCマートの最大の強みは、他の競合店と比べて非常にリーズナブルな価格設定を行っている点です。

これは、大量仕入れや独自の価格交渉力を持つことで可能にしています。

特に、季節ごとのセールやアウトレット品などを活用することで、同じブランド品でもさらにお得に購入できる機会が豊富です。

1.2. コストパフォーマンスの高さ

安いだけでなく、ABCマートが選ばれる理由は、価格以上の品質を提供していることにあります。

価格が手頃でありながらも、品質の高いブランド品や機能性のある商品を多く取り扱っているため、消費者はコストパフォーマンスに大きな満足感を得られます。

これにより、「安かろう悪かろう」という心配を抱くことなく、安心して買い物ができます。

1.3. 独自の割引プログラム

さらに、ABCマートでは独自の割引プログラムやクーポンを定期的に提供しています。

会員になることで得られる特典や、特定のカード利用による割引など、継続的にお得な買い物をすることが可能です。

このようなサービスを活用すれば、他店では味わえないお得感を長期的に享受することができます。


2. 豊富な品揃えが魅力!ABCマートで手に入るブランド靴

ブランド靴を探すとき、選択肢の多さに迷ってしまうことはありませんか?

特に、トレンドや季節に合わせた靴を手に入れたい場合、どこで購入すればよいのか悩むこともあるでしょう。そんなときに頼れるのがABCマートです。

豊富な品揃えで、常に最新のトレンド靴をリーズナブルに提供しているため、探している靴が必ず見つかります。

ここでは、ABCマートが誇る品揃えの強さについて詳しくご紹介します。

2.1. 人気ブランドを多数取り扱う幅広いラインナップ

ABCマートの魅力は、国内外の人気ブランドを一堂に集めた豊富なラインナップにあります。

ナイキやアディダス、ニューバランスなど、世界中で愛される定番ブランドに加え、独自のブランドや新興ブランドも取り扱っており、他店ではなかなか手に入らない商品も簡単に見つかります。

また、自社のブランドを上手に育て上げているため、ブランドの種類も豊富に感じるようになっています。

このような幅広い取り扱いにより、幅広い顧客層のニーズに応えています。

2.2. 季節ごとのトレンド靴を手軽にチェック

ABCマートでは、季節やトレンドに合わせた新作も常に取り揃えています。

春夏にはサンダルや軽量スニーカー、秋冬にはブーツや防寒仕様の靴といったシーズンに最適なアイテムが豊富に揃っています。

さらに、各シーズンのトレンドを押さえた商品を、見やすく配置しているため、店舗でもオンラインでも簡単に最新アイテムをチェックすることができます。

2.3. どんな足にもフィットする多様なサイズ展開

品揃えの強さはブランドやデザインだけではなく、サイズ展開の幅広さにも現れています。

ABCマートでは、サイズの豊富さにも力を入れており、小さいサイズから大きいサイズまで、あらゆる人に合った靴が見つかるようになっています。

これにより、なかなか自分にぴったりのサイズが見つからないという悩みを持つ人々にも、安心して買い物ができる環境を提供しています。