リスキリングとは
「技術革新やビジネスモデルの変化、働き方や消費者ニーズの変化に対応するために、今後新たに発生する業務で必要な新しい知識やスキルを学ぶこと」です。
あらゆる知識の学びなおしととらえられている場合もありますが、今言われている『リスキリング』は、「これからも職業で価値創出し続けるために必要なスキル」という意味合いが強いです。
世の中は、AIなどの活用によってデジタル化や自動化が急速に進行中しています。「第4次産業革命」とも呼ばれる革新的な変化への対応が企業には求められています。
なぜ、今、リスキリング?
国内でもリスキリングが必要といわれる背景には、企業のDX推進の遅れがあります。DXガイドラインが2018年に経済産業省から公開されてから以降、企業のDXへの取り組み2020年まではそれほど浸透していませんでした。
DXの遅れの中の大きな要因として2018年に経済産業省が「DXレポート」にて提示した「2025年の崖」のDXに対応できる人材が足りないというのが現実の問題として起きてきました。
『デジタル』と『ヒューマン』の両方に関わるスキルが必要ですが、特に昨今言われている、デジタルスキルの向上が急務とされています。
世界のリスキリング
世界的にも2020年に開催された世界経済(ダボス)会議では「2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする」と提唱されています。
AT&T
世界的にはAT&Tでは、すでに2008年には25万人いる従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数しかいないうえ、約10万人は10年後には存在しないと思われるハードウェア関連の仕事のスキルしか持っていないという調査から、2020年までに10億ドルかけて10万人のリスキリングを実行しています。結果、社内の技術職の80%以上を充足することができています。
Amazon
2019年7月に2025年までに米アマゾンの従業員10万人をリスキリングすると発表。従業員1人あたりに計算しなおすと、実に約7000ドル(22年1ドル138円では約96万円)。
具体的なプログラムには、技術職以外の従業員を技術職へ移行させる「アマゾン技術アカデミー(Amazon Technical Academy)」、テクノロジーやコーディングといったデジタルスキルを持つ従業員が機械学習スキルを獲得することを目指す「機械学習大学(Machine Learning University)」などがあります。デジタルスキルの全体的な底上げを目指している計画です。
ウォルマート
世界最大の小売りチェーンのウォルマートでは社内研修にバーチャルリアリティ(VR)を用いています。マシンを2016年に試験的に5店舗に導入して、2018年9月には約1万7000台を店舗に導入しました。
実際の経験がない従業員に対して、「ブラックフライデー」などのイベントや自然災害などのトラブルに対してバーチャルで体験して実際に対応できるような訓練です。
国内のリスキリングの例
下記のような企業もありますが、日本企業にとってリスキリングは始まったばかりで、海外企業に対して後れをとっていることは間違いありません。
富士通
「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱し、その中で「人材のリスキリング」は重要課題と明確に宣言 されています。
2020年10月19日経新聞 商社の文系社員、AI研修でDX
住友商事
AIを基礎から学ぶオンライン教育3時間研修を1000人に実施した。
三菱商事
「IT・デジタル研修」新設。所属、年次年齢を問わず希望者が受講。オンライン6講座、1000人が受講。
丸紅
技術的にもAIを扱える実践講座「デジチャレ」。自らテーマを決めて応募。
国の支援
経済産業省が「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を立ちあげ、厚生労働省の「教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)」と連携して助成金を出す仕組みをつくり、これからの時代に必要な新しいスキルの獲得を支援しています。