覆面調査(ミステリーショッパー)は接客応対のサービスレベル向上に有効か?

覆面調査(ミステリーショッパー)は有効か?

チェーンストアのマネージメントで有効と言われているのが覆面調査(ミステリーショッパー)です。

私が中国の赴任から戻って来てGMSの店長をしていた時に、この調査結果を大いに利用しました。
戻って来てすぐに全社で調査があったのですが、全店の100店舗近くの店舗のなかでワースト10にはいる点数でした。

店舗運営で重要なのはやはりお客様にどう見えているか、お客様の評価です。
ということで、赴任して最初の目標でこの覆面調査の点数の改善をあげました。

特に点数の高い、食品レジとサービスカウンターに対しては重点的に挨拶強化の対策をうちました。
それぞれの責任者には少しプレッシャーを与えて・・
調査が入ると思われる時期には特にプレッシャーをかけたのを反省しています。

結果、半年後の評価では、上位5番に入ることができました。

ただこの覆面調査(ミステリーショッパー)は欠点があります。
サンプル数、n数が少ない点です。

通常きちんとした対応ができていなくても、私がしたようにそろそろ調査の時期だなという頃に注意をすることによって点数を取ることもできます。

また、年に2度ぐらいの調査では、たまたまという場合もありえますし、そういう言い訳も成り立ちます。
「点数が低かったのは、たまたまその日にアルバイトが対応したので」などの言い訳で改善が進まないことも有ります。

実際、私の経験した専門店を立上げた時の話です。店舗ラウンド時に応援として売り場に立っていた時に施設の覆面調査の対応をしたのが私だった、という事が報告書が送られてきてはじめてわかりました。

幸いにも、そんなに悪い評価ではなかったのですが、「商品のお勧めでもう少し押しがあっても良かったのでは」という、アドバイスもうけました。「ああ、あの人がミステリーショッパーだったのか」とあとで思い出した始末でした。

 お客様による店舗の評価をオペレーションに活かす

年に2度程度の覆面調査よりも毎日来られているお客様の声を聞いて対応する。
こちらの方がより現実的だとは思いませんか?

聞きたくないというのも本音かもしれませんが。

私のいた会社で販売の責任者をしていた時に実施した方法をお知らせします。

以前、MJの記事の中で中国のレストランのサービスレベル向上のための施策として社員の名札にQRコードを付けサービスの良かった人にQRコードからチップをあげるという仕組みです。さすが、QRコード決裁が進んでいる中国らしい施策です。
それで社員のお客様へのサービスが一気に上がったといいます。

飲食店でも席にアンケート用紙を置いているのを見かけることがありますが利用状況はどうなのでしょう。
筆記具がなかったり、用紙が色褪せたりしているのをみると形だけになっている場合も多いように思われます。

もちろん、店舗の評価として役立てている企業もあるとおもいますが・・・

今であれば、QRコードからアンケートを記入してもらう方が、集計も簡単だと思います。
その際、アンケート記入でのプレゼントがあればより多くの声を集めることができるようになります。

本気で声を集めようとしているようになかなか思えないのは、ちょっと残念です。

私のいた会社で実施したことを記したいと思います。

その方法は、レシートにQRコードを付けアンケートに答えてもらう方法です。
私の前の責任者が実施していたのですが、店舗のクリンネスなどあまり店舗間で差の出ない項目も含まれていて、実際全く活用していない状態でした。

そこで、接客応対に項目を絞ってのアンケートに変更しました。

また、当初はお客様への還元はなかったのですが、アンケート記入でポイントを3ポイント付けるようにしました。
そのことで、毎週3000件ほどのアンケートを集めることができました。

私たちのアンケートの内容は、
1,店舗でのあいさつはありましたか?
目を見ての挨拶があった。 作業は継続だが挨拶はあった。 挨拶はなかった。
2.対応の良かった人の名前
3.ほかの人へ進めるか 点数評価
その理由

3番は、NPS®「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」を調べるという事で入れた項目です。
顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標を見るという事で入れました。

実際、この点数は高く評価されていたのですが、周りに対象の人がいない(特別な人を対象にした専門店なので)とかの理由も多くあり、あまり意味がないので途中から止めました。
途中から、販促手段の参考にするために「何がきっかけで来店されたのか」に変更しました。

このアンケートから本社として実施しなくてはいけない点と店舗が直接改善につなげて行くという事が明確になりました。

店舗では、具体的に対応が悪かった人の名前をかかれていますので、店長は指導していく。
また、レジでのポイント付与漏れなどサービス面での不備などの声もここに書かれる方もありましたので、お客様にお詫びの連絡を入れポイントを付与するなどのような具体的な行動も取りました。
休憩室の音量が大きいや休憩の椅子が少ないなど、設備に対する声もありましたのでこちらもすぐに対応するようにしました。

挨拶の度合いも毎週店舗ごとに並べ、できていない店舗、×が多い店舗の改善に繋げました。

また、全社として動いたことは、
接客の中でジェンダーの関する声が多くなってきていたので、啓蒙の動画を作成し、全員の視聴を義務付けました。応援に入っているメーカーの方も全員です。

ただ、できていない事ばかりでなく、良いことも多くありましたので表彰にも利用しました。
挨拶ができている店舗の表彰や良い対応の人の割合が高い店舗の表彰などです。

お客様からの声で、「毎回、アンケートに答えているのに改善が見れない」などの厳しい声もあるのも現実です。

一方、小売業としては一番うれしいお客様からの「ありがとう」の声も多くいただき、それが店舗のやりがいにも結びついています。

正しい判断をする為には、情報の量が必要というのを別のコラムで書いていますが、多くの声を集め、その声に素直に対応する。

個店はもちろんですが、本社が店舗の店長のマネジメントの状況をみるのにも一番の参考になります。

多店舗化されている方の参考になればと思います。